砂浜に描いたうたかたの夢
「急にどうしたの?」

「いや……振り返れば、ここ数年、面と向かって話したことなかったなって」



停止線の前で車が止まった。


帰る前に、凪くんのお母さん達に何か言われたのかな。子供の話をちゃんと聞いてあげてねとか。

あれだけ泣いてたら、同じ後悔を抱いてほしくないって思ってそうだし。



「最初はすごく大変だったけど、今はわりと楽しいよ。試験前は、クラス全員一致団結して、色んな手を使ってテストに出る問題を先生から聞き出してる」

「……そうか。なら良かった」



信号が青に変わり、車が動き出した。


クラスメイト達、当前だけど、みんな性格はバラバラ。おとなしい人とうるさい人の差が激しく、入学当初は上手くやっていけるのかなと心配していた。

けど最近は、クラスのグループチャットで、宿題の答えや解き方を教え合ったり、先生から盗み聞きした耳寄り情報を共有したりして、休日でも盛り上がっている。


個人個人の仲はそこまで親密ではなくても、全体的な雰囲気は悪くないんじゃないかな。



「お父さんは? 学校楽しかった?」

「楽しかったよ。……中学まではな」
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