砂浜に描いたうたかたの夢
「えっ、高校で何か嫌なことでもあったの? いじめられてたとか?」

「いや。いじめられてはないよ。ちゃんと友達もいた。ただ……途中で離脱しただけ」



ハンドルを握る力を少し強めて、切なそうな声色で呟いた。

途中離脱。言い換えるならすなわち……。



「一花と同じで、進学校に入って。兄ちゃんと姉ちゃんも同じ学校だったから、負けないぞって頑張ってたんだ」

「……どうして、辞めたの?」

「……頑張っても無駄だと感じて諦めたんだ」



父が高校を中退したのは高1の終わり。
入学した理由は、伯父と伯母の背中を追って。

両者ともに、高成績を収めて期間限定の学費免除を受けたことがあり、自分も頑張って両親を喜ばせようと必死に勉強して、見事合格。


しかし、上2人が優秀兄妹だと校内で名が知られていたため、比べられたり、期待してるよと言われて、次第にプレッシャーを感じるようになったそうで……。



「応援してもらっても、いくら頑張っても、満足のいく結果が出せなかったから申し訳なかった。かろうじて部活動では活躍できていたんだが……兄ちゃん達に比べたら全然。そんな自分が嫌になって荒れたんだ」
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