砂浜に描いたうたかたの夢
劣等感に苛まれ続け、自暴自棄に。
何をしてもやる気が起きず、勉強も放棄し、結果中退。


それからは半年ほど引きこもり、両親に勧められたバイトを始めたらしい。

のだが、心が回復していなかったのでどれも続かず。始めては辞めての繰り返し。月日が経ち、ついに同級生が卒業する年を迎えた。



「当時同じクラスだった友達から、高1の担任も同時に定年退職すると聞いてな。最後の挨拶も兼ねて家に来てくれたんだ。そこで初めて、全部吐き出したんだよ」

「家族にも、言ったの?」

「もちろん。全員集合してもらって、みんなの前で話したよ」



病室で見た時みたいに、涙と鼻水まみれになりながら胸の内を話したという父。

そんな父に、当時の担任はこう声をかけた。


『高校を続けることは諦めたとしても、あなたは何度もバイトに挑戦した。何かに挑戦する姿は、家族の皆さまに勇気を与えたと思いますよ』

『親にとっては、子供が元気で健やかにいるだけで、充分嬉しいものなんです』


その後、元担任のツテで仕事を紹介してもらい、会社が潰れるまで働いた。と。
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