砂浜に描いたうたかたの夢
はっはっはと豪快に笑い始めた。
凪くんみたいにとはいかなかったようだ。



「近所に住んでるのは初めて知ったなぁ。どの辺りかは分かるかい?」

「いやぁ……そこまでは」



生き生きとした表情に輝く瞳。会いに行く気満々だ。

いくらご近所付き合いが上手くても、それはちょっと図々しくない⁉ 田舎の人の距離感ってこんな感じなの⁉

話が広まりやすいのも、こういうところから来てたりするのかな……。



「毎日散歩してるなら、どこかですれ違ってるかもよ? 見たことないの?」

「いやぁ、ないねぇ。最近だと珍しいから、1度見たら絶対覚えてるはずなんだが……」



話題を逸らすように尋ねるも、返ってきたのは凪くんの時と似たような答え。

毎日2時間も散歩してるのに、1回も見たことないなんて……。

お散歩コースか時間帯が違うのかな? それかもう老犬で、あまり外に出てないとか?



「もしかしたら、他の犬種と思い込んで気づかなかったのかもしれないなぁ。今時のスピッツは、昔と比べてだいぶおとなしくなってるらしいし」

「だいぶって、そんなにうるさかったの?」

「あぁ。近所に犬が多かったから文句は言われなかったんだが、何かある度に吠えてたよ」
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