砂浜に描いたうたかたの夢
初日と同様付き添ってもらったので、今日も帰ったら卵焼きを作ることになっている。



「2日間お世話になったお礼に、今日は特別に智のだけ特大サイズにするよ」

「……どうも」



予想とだいぶ違ったそっけない返事に思わず2度見した。

なんでそんなに静かなの? 特大サイズだよ? もっと喜ばないの?



「どうした? お腹痛い?」

「いや、別に」

「智くん、素直になっていいんだよ」



頭上にハテナマークを浮かべていると、祖父がクスクス笑いながら話に入ってきた。



「素直? どういうこと?」

「智くんはな、一花ちゃんの作っただし巻き卵をもっと食べたいそうなんだよ」

「ちょっ、じいちゃん……っ!」



えっ……じゃあさっきの質問、卵焼きを作ってもらうための口実が欲しかったってこと⁉



「そうなの?」

「……そうだよ。すげー美味かったから作り方教えてほしいくらいだよ」



核心を突かれて開き直ったのか、ぶっきらぼうな口調に。だけど、言ってることは素直。

卵焼きが好物なのは知っていたけれど、そんなに気に入ってもらえてたなんて。



「ありがとう。ご飯作り手伝ってくれるなら教えるよ」

「マジ? いいの?」

「うん。それと、あの卵焼き、お父さんに教わったから。来たら伝えてあげて」

「叔父さんが? すげーな」
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