砂浜に描いたうたかたの夢
開いた障子の隙間から見えた顔に驚き、アイスがのどに詰まりそうになった。

ビックリした……。全然物音がしなかったから、てっきり自分の部屋で寝てるのかと思ってたよ。

慌てて起き上がり、声をかける。



「どうしたの?」

「これを、新しいのにしようと思ってね」



曾祖母のしわしわの手が、自身の額を指差した。剥がれかけた冷却シートを交換しにきたらしい。

縁側で日向ぼっこでもしてたのかな。



「それなら私が持ってくるよ! 場所知ってるし!」

「そうかい? ありがとねぇ」



座布団の上に座らせて、小走りで別室へ向かった。薬品類が入った引き出しから1枚取り、再び居間へ。



「持ってきたよ! これで合ってる?」

「あぁ。お休み中にありがとねぇ、タダシさん」



穏やかな顔で笑う曾祖母にシートを渡したが、最後に発した名前に思わず口元が引きつった。



「……ひいおばあちゃん、私、一花だよ。タダシはあっち」

「あら、そうだったかね。ごめんねぇ」



3回目の自己紹介をし、襖を開けて客間の仏壇にある曾祖父の写真を指差した。
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