あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
その瞬間、はしゃぐ雪都の手からヨーヨーがスルッと滑り落ちた。


「はい、どうぞ」


「ありがとう」


大きな手から小さな手へ……


落ちそうになったヨーヨーを、優しくそっと差し出すその手は、慶都さんのものだった。


「君、雪都君?」


数秒、微笑みを浮かべ見つめてからの問いかけに、


「うん。そうだよ」


雪都は元気に答えた。


「そっか、良い名前だ。君は元気でいい子だね」


そう言われて嬉しそうにニコッと笑う雪都。


初めての2人のやり取り。


膝まづいて見つめる慶都さんの目は、穏やかで優しく、我が子を見守る父親の顔になっていた。


その光景を見ていたら、私……


思わず目頭が熱くなって、涙が溢れそうになった。


一生、この2人が対面することはないと思ってた。


私が父親役も頑張ろうって、慶都さんに会えるなんていう希望は持たないようにしようって、ずっと自分の中に想いを閉じ込めて、絶対開かないよう鍵をかけてきたのに。


なのに……こんな風に家族がひとつの空間に揃うなんて。
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