あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
そう、この人は私の義理の弟になるかも知れない人。


「俺の気持ちは君にある。だから一緒に……」


九条さんは再び私を強く抱きしめた。


耳にかかる吐息と、胸に響く熱い言葉に心が大きく揺れる。


本当に私のことをそこまで想ってくれてるの?


ずっとあなたへの想いを、心の奥深くに閉じ込めてきたのに。


どうして……


もう、わからないよ。


「私、わた……し……」


「何も考えなくていいんだ。全て俺がちゃんとするから。君を悲しませたりしない。だから………」


そんなセリフ、ズルいよ。


私、何もかも捨てて九条さんを求めてしまいたくなる。


でも、やっぱりダメ。


こんなの、許されない。


「九条さん、本当にごめんなさい。家族を裏切ってしまった私が幸せになるなんて、そんなの……そんなの……」


どうしていいのかわからず、いたたまれなくなって、私は慌てて逃げるようにその部屋を出た。
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