あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
外に出て、後ろを振り返る。


「追いかけて……来ないんだ……」


私、いったい何を期待してるの?


追いかけてくるわけないじゃない。


九条さんの言葉を信じていいのかもわからないんだよ。


昔から、お父様と一緒にたまにうちに来ていたとはいえ、私はそんなに話したことがない。


気づけば妹がいつも九条さんの近くにいたから。


それでもたまに話しかけてもらうと嬉しかったし、優しくて良い人だって思う。


だけど本当は……


もしかして私の体が目当てで近づいた?


ううん、九条さんはそんな人じゃない。


そうじゃないって思うけど……


ああ、何を信じて、どう行動すればいいのか全然わからない。


ただ事実なのは、妹を裏切ったということ。


私は、妹への申し訳なさを抱えながら、モヤモヤした気持ちで重い体を引きづるようにして歩いていた。


九条さんと体で愛を語り合ったあの数時間のことを思い返すと、嘘みたいに胸がキュッとなる。


こんなにも胸を焦がすような熱い想いを、私はいったいどこに隠せばいいんだろう。
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