あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
持ちたくても持てなかった、こんなにもゆったりと流れるかけがえのない時間。


「あっ、金魚すくいがあります」


「やってみる?」


「はい」


そんな何気ない会話さえ、嬉しい。


この一瞬一瞬を噛み締めたいと思った。


ポイを持って金魚をすくう無邪気な彩葉が愛おしくてたまらない。


「慶都さんも、早く」


「あっ、ああ」


まるで2人とも童心に返った気分になる。


この前の夏祭りの子ども達みたいに。


「また逃げられちゃいました」


「じゃあ、俺はこの黒いのを……うわっ」


「あ~慶都さんも逃げられちゃいましたね」


「次はこの赤いの」


「慶都さん、金魚をすくうのに必死になってませんか?」


顔を見合わせ笑う、彩葉のこんな屈託のない笑顔……初めて見た。


俺は、大切で愛くるしいこの人の頬に……そっと、触れたくなった。
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