あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
それから、ゆっくりと歩いて目的の場所までやってきた。


河岸に、間隔をあけて、いくつもある石段。


その石段の1番上にハンカチを敷いた。


「ここ、座って」


「すみません、ありがとうございます」


まだ辺りはまばらで、これから人が増えてくるんだろう。


少し薄暗くなったこの空に、大輪の花火が上がったら、どんなに綺麗だろうか。


うっすらと浮かぶ月も、今か今かと美しい花が咲くのを待ち構えているようだ。


俺は、今、彩葉に伝えておこうと思った。


「彩葉」


「はい」


「花火、楽しみだな」


「すごくワクワクしてます」


「雪都も見てるんだよな?」


「はい、違う場所でおじいちゃんと。最近はもうおじいちゃんが大好きで」


「良いことだ。一堂社長の喜ぶ顔が目に浮かぶよ」


「父は雪都にメロメロですから」
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