あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
「いいかげん、自分の容姿がどれ程のものなのか自覚してほしい。気が気じゃない」


口にしたワインが、慶都さんの唇を少し湿らせる。


それを見て、さらにドキドキを増したこの気持ちを隠すために、私も慌てて口をつけた。


美味しいけど、緊張のせいでせっかくのワインの味があんまりわからない。


「慶都さん、今夜はおかしいですよ。からかってばかりで……」


「からかってるように見える?」


ダメ、そんな艶っぽい目で私を見ないで。


心臓がおかしくなっちゃう。


「は、恥ずかしいです」


「君は本当に魅力的だ。他の誰かに盗られないか心配ばかりしている」


「そ、そんなこと……」


「もちろん、だからというわけではないが、結婚のこと……なるべく早くしたいと思ってる。この秋には……」


「そんなに早くですか?」


「ああ。それに雪都とも早く正式な親子になりたいんだ」


それは、とても嬉しくて有難い申し出だった。
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