あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
「ここに入ろう」


九条さんは、少し離れたカフェに車を止めた。


とても落ち着いた店内。


平日の夕方前の時間だからか、そんなに混雑していない。


1番奥のテーブルに向かい合って座り、九条さんはコーヒー、私はミルクティーを注文した。


私、まだ少し手が震えてる。


お願いだから早く治まって。


正直、この状況がまだ理解できなくて、どうして目の前に九条 慶都さんがいるのか、よくわからないまま。


この3年間、ずっと心の中にはいたけど、決して求めてはいけなかった人。


胸の奥に閉じ込めていた想い人が、手を伸ばせば届く距離にいるこの現実を、そう簡単には受け止められない。


「彩葉、体は大丈夫か? 元気でいたか?」


身内みたいな質問に少しホッとする。


「はい。九条さんこそお元気でしたか?」


「……元気だった……というべきか」


歯切れの悪い言葉、九条さんは少し顔を曇らせた。
< 43 / 235 >

この作品をシェア

pagetop