あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
「子どもの父親は……俺だよね?」


えっ……


一瞬、私の中の時間が止まった。


九条さんのその質問……


答えはYES。


でも……


本当のことを話してしまったら、私、どうなってしまうかわからない。


いっぱい悩んで、それでもようやく1人で雪都を育てる決心をした。


その決意が揺らいでしまいそうで怖い。


私は目をぎゅっと閉じて、ただ下を向くことしかできなかった。


もう、心臓のメーターが振り切れそう。


「彩葉、落ち着いて。俺を見て。大丈夫だから」


少しパニックになってる私の心の中に、九条さんの穏やかな声がスーッと入ってきた。


優しさで満たされたその言葉に、私はゆっくりと顔をあげた。


ただ九条さんを信じて、深く呼吸をしながら。


そしたら、目の前に柔らかな笑みを浮かべるあなたがいて……


動揺、不安、迷い、そんな複雑な思いに覆われた心に、小さくて温かい明かりが、ポっと灯ったような気がした。
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