あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
あまりにも私の気持ちを大事にしてくれる九条さん。


その思いに、ずっとずっと何層にも積み重なっていた物が、堪えきれずに一気に溢れ出した。


周りの目もある、九条さんにも申し訳ない、でも、その涙を止めることはできなかった。


次から次へとこぼれ落ちる雫、押し殺す声。


それでも、迷惑そうな顔1つせず、


「泣かないで……」


そう言って、九条さんは、私の頬に伝う涙の跡を親指でそっと拭ってくれた。


「君は素晴らしい女性だ。その優しい気持ちを持つ君と、そして……俺達の子どもを、これから先は何よりも1番大切にしたい」


もう……


九条さんに全て覚られてしまった。


この人に、これ以上隠し通すのは不可能だと思った。


「九条さん……黙っていて本当にすみませんでした。確かに、あなたの子どもです。でも、私は素晴らしくなんてありません、優しくもありません。だって私は……麗華の婚約者であるあなたを……」
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