あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
「なぜ麗華ちゃんが見合いを受けたのかはわからない。いっそ断ってほしかった。俺は、麗華ちゃんを愛することはできないから」


「九条さん……」


「俺が父に断ってほしいと言っても、父は君のお父さんには言えなかったのかも知れない。俺自身も、父と一堂社長の深い思いを知っていたから、無下にはできずにいた。2人は、俺のことを誰よりも理解してくれている恩のある人達だから」


あの時、九条さんがそんな思いでいたなんて……


きっと、1人で抱えて、ものすごく苦しんだんだ。


「あの日のことは今もずっと忘れられない。君に偶然出会って、体を重ねた日のことを。もう、どうしようもなく君を求めてしまった。たまらなく愛おしくて、何も考えられず、おかしくなるくらいに君を……」


「あの時、私もあなたを求めました。九条さんに抱かれて……とても幸せでした」


今でもまだ、この肌に九条さんの感触が残ってる。


目を閉じれば、激しく、そして優しく、私を愛してくれたことの全てが鮮やかに蘇る。


死ぬまで、私はあの永遠のように感じた2人の時間を忘れることはないだろう。
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