あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
『シートベルトして』


『は、はい』


私は、つい言われるままにシートベルトをしてしまった。


そこからほんの数分で、九条さんが住む立派なマンションに到着。


支えられたままエレベーターで上がり、気づけば部屋のリビングまで入り込んでいた。


そんな九条さんの強引さに驚きながらも、私は結局逆らうことなく豪華でフカフカなソファに腰を下ろした。


『横になって構わない。楽にして』


『あ、ありがとうございます』


まだフラっとする体をソファの背もたれに預けると、体を包み込むような優しい感じにホッとした。


九条さんはキッチンの冷蔵庫から高級なビンを取り出し、馴れた手つきで栓抜きを使って蓋を取った。


私の目の前で綺麗な透明なグラスに注がれていくその水は、まるでワインか何かのように思えた。


ビンに入った水を飲むなんて初めて。


『いただきます』


ただの水なのに緊張する。


ん、まろやかで美味しい。
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