あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
その問いかけに、藤間さんはパッと表情を切り替えて、


「何がですか? 私は大丈夫です」


と、何事も無かったように言い放った。


「だ、大丈夫なら良かったです」


「とにかく、慶都さんは無理やり九条社長や一堂社長にお見合いをさせられて断れなかったんだと思います。お父様を誰よりも尊敬されている方ですから」


それは……慶都さんも散々悩んだと思う。


お父様を悲しませなくないという気持ちは痛いほどわかるから。


「私はとてもつらかったですが、麗華さんは天下のitidou化粧品のご令嬢ですから、私が身を引くつもりでした」


「そんな……藤間フーズさんは、誰もが知る立派な大企業さんですよ」


「やめて下さい、彩葉さん。私はちゃんと身分をわきまえています」


圧倒されるような藤間さんの目力に、思わず後ずさりした。


「あの、み、身分はそんなに大事でしょうか?」
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