憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
二人いる?
僕は軽く混乱していた。
なぜ現実世界において、すでに亡くなっている彩羽が存在するのだろう? 彼女の霊魂はいったいどこから来たんだ?
彩羽にそっくりな女子を見て、とっさに妹ではないかと思った。けれど、当の本人に違うと否定されたら、あれは彩羽本人なのだろう。
「彩羽さんはどこからきたの?」
『どこから?』
「だって、おかしいじゃん。同じ次元にいながら同一人物がふたり同時に存在するなんて、普通ならありえない」
自室のベッドに尻を埋めながら、僕はスマホの中の彩羽をじっと見つめた。彼女は暫し逡巡したあと、『でも。あれは私だよ、見間違えるはずない』と文字を並べた。
両親とともに夕食をとり、頭痛をおさえるための鎮痛剤を水で流し込む。お母さんが心配そうな面持ちで「大丈夫なの?」と僕の目をのぞき込んできた。
「瑛斗、最近顔色も悪いみたいだし。体調がすぐれないなら週明け病院で診てもらう?」
「大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけだから。もう寝るね」
疲れてる、を憑かれてると変換したいのはやまやまだったが。僕は平気なふりをして自室へつづく階段に足をかけた。