憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
 多分、彩羽のせいだ。いや、多分じゃない。きっとそうだ。あいつがなんの別れも言わずに消えたりするからだ。

 僕は彩羽の情報を記したノートをひらいて、彼女との日々を忘れないように書き出すことにした。

思い出せる範囲で、あの降霊術をした瞬間から、僕に取り憑きスマホを占拠したことを簡単な文章で綴った。

 そして最終日。あの事故が起こったあとに見た青白い球体が、現時点で生きているイロハに吸い込まれたことを書いたとき、ぴたりとシャープペンシルが止まった。

 あれはいったいなんだったのか。僕は無言で頭を働かせ、スマホからインターネットにつないだ。考えられる可能性について充分にしらべ尽くした。

 あのとき見えた青白い球体を、仮に彩羽の霊魂と仮定して考える。霊魂の彩羽は、生者のイロハに吸い込まれるようにして消えた。

 彼女が亡くなるという未来を変えてしまったために、ある種のタイムパラドックスが起こり、彩羽は消えてしまったのだろうか?

 単純に成仏という結果に落ち着いたのだとしたら、それはそれでいい。けどもしも……そうではないとしたら?

 僕はSF映画でしか起こりえない可能性について考えをめぐらせた。
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