憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
 放課後の教室。言い出しっぺのコウジが緊張したような声をだした。タカシとコウジと僕の三人でひとつの机を囲み、十円玉に人差し指を載せている。

 コウジの緊張がこちらにも伝わり、僕は口内にたまった唾をごくりと飲み込んだ。どこかはりつめた表情をするタカシが、不安そうに僕らに目配せする。

「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください」

 今度は三人で声を揃えた。呪文を唱えるように同じ台詞を言い、指を置いた十円玉がピクリと反応した。そのまま紙面をするするとなぞり、十円玉は“はい”の位置で止まった。

「すげぇ」

 タカシが感嘆の息をもらした。本当に何らかの霊が現れたのだろうか。疑わしいものだ。僕は首をひねった。

 コウジがテストのことや、気になる女子について二、三質問をした。タカシも塾のことと部活の先輩に関して質問をした。

 そのたびに十円玉は動いた。まるで何かの生き物になったかのように、するすると滑らかな動きを見せていたが、僕は二人のうちのどちらかがやっているのだと思っていた。

 二人はテンションを上げていた。「エイトも何か質問しろよ?」。タカシにそう勧められるものの、急なことなので何も思いつかない。
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