憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
エピローグ
SNS効果で人気のある洋菓子店に、お母さんと来ていた。
店内は明るく、いかにも女性が好みそうな、メルヘンな雰囲気を醸しだしている。焼き菓子の置かれた棚やテーブルにはうさぎや馬車などのオブジェも飾ってあった。
「瑛斗、どれにする?」
「別に。どれでもいいよ」
「チョコと生クリームなら、どっちがいい?」
「うーん……苺が多いやつがいいから。しろ、かな」
お母さんが、ガラス張りのショーケースを指さし、ひとつのホールケーキを注文した。えんじ色のエプロンと帽子を身につけた店員が、チョコプレートの有無を確認し、お母さんがメッセージを伝えた。
そのあいだ、僕はショーケースの中のカットケーキを眺めていた。どれも彩り豊かに仕上げられたケーキばかりで、まるで芸術作品だ。
ふと、店内から談笑する声が聞こえ、そちらに目を向ける。販売部分とは別に、三分の一ほどがカフェスペースになっているらしい。
客は見事に女性ばかりで、別の店員が飲み物を運んでいた。