憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
 レジで会計を済ませたあと、メッセージプレートの確認のため、少し待つように言われた。レジより奥が厨房のようで、白いコックコートを身につけた職人さんが数人、忙しなく動いていた。

「瑛斗、先に車に戻ってていいわよ」

 お母さんに声をかけられ、ドアを開けた。ドアベルが心地良い音色を奏でた。

 あれから四年が過ぎ、僕は彩羽と同じ十八歳になった。誕生日は先月の二月に済ませていたので、今日のケーキはそれとは別件だ。

 お母さんが店員に伝えたメッセージプレートは“合格おめでとう、瑛斗”で、読んで字のごとく、僕が春から通う大学に受かったことのお祝いだった。

 彩羽との不思議な体験を経てからというもの、僕はゲームをやるだけにとどまらず、自らで作ってみたいと考えるようになった。

 おそらくは厳しい世界だろうし、難しい作業の連続だと思うけれど、やりがいと達成感は得られそうだ。

 単調でつまらない、なんて感情とはもうおさらばだ。

「ねぇ、ちょっと待って」

 駐車場に向かっていると、そんな声を背後に聞いた。僕には関係ないだろうと思い込み、そのまま歩みを進める。

「ちょっと待ってってば!」

「……え?」
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