憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
 幽霊女子に付き合っているひまがあるのなら、少しでもゲームの内容を進めたい。

『いいの? このままで』

「え?」

『私が憑いているせいで、きみの体に異変が起きたりしてない?』

「そう、言われれば……」

 左肩だけじゃっかん重いような?

 ちょうど左側の背中の一部分が、しびれたような感覚だ。

『悪霊だって自覚はないけど、私は死んでいるわけだからさ。生者に憑いてるのって良くないと思うのよね。
 あ。ほら、あの“源氏物語”で習った六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)光源氏(ひかるげんじ)の恋人たちを呪い殺したって話があったでしょ?』

「いや、ちょっとわからないけど」

『……ああそうか。中学ではまだ習ってないんだった。まぁとにかく、きみにとって私が憑いてるのは良くないことなの』

 つまり彼女が言いたいのは、僕の身が危険にさらされているかもしれない、ということだろうか。

「あの。悪いんだけどさ」

『なによ?』

「そろそろゲームさせてもらってもいい? 今日のログインボーナス、まだ受け取ってないんだよね」

『はぁ?? あんた、私の話聞いてた!?』

 このあとスマホ越しの彼女に、軽くお叱りを受けたのは言うまでもない。
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