雨上がり、また想いだせるように。














「はい、どうぞ」



机の上にコトっと湯気のたっているコップが置かれる。


あのあと、私は彼に連れられて彼の部屋にやってきた。


家に着いた頃には、天気はさっきまでの激しい雨がまるで嘘かのように晴れていて、濡れていた服も冷えていた身体も既に回復していた。



「ありがとうございます」


「大丈夫?気分は落ち着いた?」



立っていた彼は私の向かい側に腰を下ろす。



「大丈夫です」



私が答えると彼は急にハッとしたような顔つきになった。



「そういえば、名前聞いてなかった。名前は?」


「雨です。あなたは?」


「虹に空って書いて”こあ”」



彼の名前を聞いて頭に浮かんだのは青空に浮かぶ虹だった。


”虹空”という名前には”虹”の漢字が入っているんだから想像してしまうのは当たり前のことなのかもしれない。



でも、青空に浮かぶ虹はきっと綺麗でみんなに好かれるんだろう。そういった意味で自分とは真逆だなと思った。雨が好きな人は比較的に少ないから。


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