雨上がり、また想いだせるように。
その質問がふと口から出たとき、ため息をつきそうになった。
なぜなら、私はまた逃げることを考えてしまっているから。
次、この世界から自分の居場所が無くなった時、どこに逃げるのか。
逃げるということを前提に保険をかけてしまっている。
「出られると思うよ。実際、出た人もいるし」
「……虹空くんは出ようと思ったことはないの?」
私が道路の真ん中から虹空くんの部屋まで連れられた時、虹空くんは近道や裏道をたくさん知っていたし、今こうやって説明まで出来ている。このことから、虹空くんは沢山の時間をここで過ごしていたのではないだろうか。だから、出ようと思ったことはないのかとても気になった。
「出ようと思ったことはないよ。僕はまだ見つけてないから」
はっきりと意志のこもった声。
「見つけるって何を……?」
「僕がここに来た理由」
即答だった。虹空くんは私が聞くと一瞬の間も空けずに答えた。
「理由があるって確定したわけじゃないけど、目的があってここに来たから」
すごい、素直にそう思えた。
お姉ちゃんが居ない世界に行きたい、ただそれだけの理由で来た私とは大違い。
何をこの世界でしたいのか、何のために来たのか、何も分からない私も虹空くんのようになれるのだろうか。
目的ができるのだろうか。
「……私も出来るかな?」