雨上がり、また想いだせるように。
降りしきる雨
「次は叶山さん」
新しい学年が始まる日、私は顔をしかめながらも席を立った。
「叶山雨です。よろしくお願いします」
小さな声で下を向きながら自己紹介をする。
私よりも先に自己紹介をした人は好きなものや趣味を言っていが、とにかく少しでも目立ちたくない私は自分の名前だけを言い、席についた。
「あの子って叶山先輩の妹だよね」
「嘘だー!全然似てない」
コソコソと耳打ちをするクラスの女子達。
慣れたものだけど、チラチラと私を見ながら色々なことを言われるのは正直、気分の良いものではない。
「ほんと、ありえないよね」
前に座っていた彩花が怒っているような口調で私の方に身体を向ける。
「もう慣れたよ」
「慣れたって……、雨はもっと怒ってもいいんだよ?」
気の弱い私が怒れるわけがないのに、口を膨らませながら言う彩花に対し、『可愛いから、そんなこと言えるんだよ』と、一瞬でもそう思った自分に嫌気がさす。
彩花は私の親友だ。
中学生の時、クラスで一人ぼっちだった私に話しかけてくれてそこから仲良くなった。
そして、高校に入ってからも、奇跡的に同じクラスになり、私が一人になることはなかった。
彩花は可愛くて、いつもクラスの中心に居て、私とは真逆の存在。
そんな彩花と自分を比べて、暗い気持ちになることもしばしばある。
それに最近は、彩花が私のために言ってくれている言葉に苛ついてしまう。
「叶山先輩と雨を比べるなんて、ほんとありえない!雨には雨なりの良さがあるのに」
「私なんて、お姉ちゃんと比べたら……」
左手と右手の指を絡めながら、彩花から視線を自分の手に向ける。
「“私なんて”って言わないの!雨は雨だよ」
肩を元気づけるようにトントンと叩かれる。
顔をあげるとそこには彩花の白くて、全てのパーツが整った綺麗な顔があった。
可愛いからそんなこと言えるんだよ、またそう思った自分の性格の悪さにため息をついた。