雨上がり、また想いだせるように。
そして、「雨」と優しく私の名前を呼び、手をさしだす。
私はその手をとって、指を絡めた。
虹空くんもそれに応じてくれる。
手は繋いだまま、海から出て靴を拾い上げ、海岸沿いのベンチに並んで座った。
そのベンチの上に屋根は無くて、天気雨がどんどん身体を濡らしていく。でも、海で濡れていたから気になることはなかった。
「僕、天気雨好きだな」
唐突に切り出した虹空くん。まるでこの天気に見惚れているよう。
「どうして?」
「天気雨って、綺麗だから」
心にすっと入ってくる声。
海を見つめながら、はっきりと答える虹空くんから目が離せない。
「雨には雨なりの良さがあって、晴れには晴れなりの良さがある。だから、それぞれで綺麗な天気を作り出せるんだと思う。……でも、天気雨は晴れと雨、両方が存在しないと作り出すことの出来ない天気。二つで一つ」
自分のことではないと分かっているのに、虹空くんの言葉が優しく私を包んでいるかのよう。