雨上がり、また想いだせるように。
顔が濡れていて良かった。
服が濡れていて良かった。
天気雨が降っていて良かった。
海を眺めながら鼻をすする。泣いてるのがバレないように。
「雨。この世界から出たくなったらいつでも言ってね」
「……え……?」
急に虹空くんが涙声でそんなことを言うから視線を海から移した。
「……雨は自分が思ってるよりもずっと強いからもうすぐ、この世界がなくてもやっていけるよ」
虹空くんの目から一粒のしずくが頬から滑り落ちる。
そのしずくが天気雨でないことは一瞬で分かった。
「……虹空くんは?」
繋がれている片方の手をぎゅっと握る。でも、すぐに力を抜いた。
握りすぎるとパズルのピースのようにバラバラと崩れていきそう。かといって、弱く握ると、今にもふらふらと、どこかへ行ってしまいそうな気がする。
「僕も長い間、ここに居るから雨と一緒に出られたらいいな」
「……一緒にだよ」