雨上がり、また想いだせるように。
虹空くんに手招きをされて、公園に設置されている双眼鏡を覗く。
裸眼では見ることのできないところまではっきりと見える。
きらきらと輝く海の水面。岩にとまる鳥。お母さんと手を繋いで歩く小さな子達。
「……夢の世界って綺麗なんだね」
都会というよりは、ビル一つない夢の世界は田舎だ。
人も少なくて、本当に好きな人とだけ関わって生活が出来る。
その点において、夢の世界は現実の世界よりずっと綺麗なんだと思う。
「そうだね。僕が初めてこの世界に来たときは……誰も居なかった」
「……え?」
双眼鏡から目を離して虹空くんを見る。
「何でもない!もうそろそろ、日も暮れるし、帰ろっか」
はぐらかさた気がするけど、虹空くんの大きいけど今にも壊れそうな後ろ姿に声をかけることは出来なかった。