雨上がり、また想いだせるように。



『こーくん。こっちもすごいわよ〜。じゃーん!』



お母さんがケーキの箱を開ける。


そこには箱に入っていたDVDと同じアニメの絵が大きく描かれたホールケーキだった。



『僕の好きなやつ!!!』



男の子は目を輝かせ、スプーンでケーキをすくい、頬張る。



『もう、こーくん!こんなにつけちゃって。そんなに急いだってケーキは無くならないわよ』



お母さんは指で優しく、男の子の口周りについているクリームを拭い、口に指を入れる。



『そうだぞー。よし!パパが三等分してやる』



お父さんは包丁を持ち、ブツブツとこのケーキをどうやって三等分しようか、呟いている。



『パパ、下手だから、ママがいい』


『おいおい、嘘だろ〜?!』



周りが笑いに満ちる。


三人とも楽しそうでたまらない、そんなように見えるし、お父さんとお母さんのこーくんを見る顔が愛おしさと優しさでいっぱいになっていて、いい家族。そんなイメージだ。


そんなことを考えていると、三人の姿がぼやけ、場面が変わった。



『お母さん、いつもありがとう!』



男の子が透明の珍しい形をした花瓶を手渡す。



『こーくん、ありがとう』



今日は何の日なのだろう。

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