雨上がり、また想いだせるように。


虹空くんは耐えきれなくなったようで、自分の部屋に戻って布団の中にくるまって泣いていた。


触れられないのが本当にもどかしい。


でも、私は触れられなくても彼を抱きしめた。


抱きしめた彼がぼやけていく。



『こーくん!ただいま』


『今日もおつかれ』



虹空くんが玄関へ向かい、お母さんから荷物を受け取る。



『ん〜!何かめちゃくちゃいい匂いする』


『作ってみたんだ、ハンバーグ』



虹空くんとお母さんはテーブルのある部屋へと向かう。


玄関を見て思ったが、この家は前住んでいた家とは全然違う。


つまり、お母さんとお父さんは離婚をした。そして、虹空くんはお母さんと一緒に住んでいる。


 
『凄いわね。美味しそうに出来てる』



お母さんは上着を脱ぎながら、フライパンにあるハ
ンバーグを見る。



『ママは着替えてきて。今からお皿に入れるから』



『は〜い』、とお母さんは障子で区切られた部屋へと入っていく。


虹空くんは机の上に置かれたボールペンやコップを片付けていく。


机の隅には花瓶が置いてあって、もちろんそれは虹空くんがあげた花瓶ではなかった。

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