雨上がり、また想いだせるように。
お母さんは浅見さんの腕をほどき、虹空くんに抱きついた。
『こんないい子に育っちゃって……こーくん、ありがとう』
お母さんは涙を流していた。
虹空くんは急に抱きつかれたことに驚いていたけど、すぐに腕を回し、抱きしめ返していた。
三人の姿がぼやけ、場面が変わる。
『虹空には一人で暮らしてもらおう』
浅見さんとお母さんが向かい合って、見たことないくらい大きなリビングのダイニングテーブルに座っている。
お母さんの膝には小さな赤ちゃんが座っていた。そう、二人には子供が出来た。
『そうね。あの男の子なんて嫌すぎるわ』
お母さんは豹変(ひょうへん)していた。姿も性格も。
首には高そうなダイヤのネックレス。耳には赤く輝くルビーのピヤス。服は浅見さんが挨拶に来た時に持っていたかばんと同じブランドのロゴがついていた。
『もう俺達に子供が出来た。しかも男の子だ。跡継ぎにもならないし、他の男の子なんて、考えるだけで』
浅見さんが自分の肩を寒気がしているようにさする。