黒幌に呑み込まれる
呑み込まれる
ベッドの上に向かい合って座り、神楽は真幌の足の間に挟まれている。

愛おしそうに神楽の頬を撫でる、真幌。

「あの…真幌……」
「ん?」

「本当の真幌は、どこにいるの?」

「…………ここにいるよ」
神楽に口唇を寄せる。

そして、啄むように頬や額にキスを繰り返す。

「あ…いや…そうじゃなくて…」


「神楽は“黒幌”って、知ってる?」
不意に言った、真幌。
「え?噂なら…」

真幌が微笑み、神楽を見つめる。

「え?え?
黒幌って………」

「俺が高校生の時に作ったの」

「え……」
神楽は、ただの噂だと思っていた。

ある意味、都市伝説のようなものだと━━━━━

「黒部 真幌の“黒”と“幌”
…………ねっ!単純でしょ?」

「真幌は、あの噂の……」
「うん」

神楽は、信じられない思いで真幌を見ていた。


「神楽の知ってる黒部 真幌。
さっきの黒部 真幌。
…………どっちも、俺だよ?」

「真幌…私……」

「ん?
放さないよ?」

「え……」

「そんな表情(かお)してたから」

「それは……」

「ねぇ、神楽。
神楽はもう……俺から放れられないんだよ?」

「真幌…」


「ほら、俺の目を見て?」

頬を包み込まれ、真幌の言葉が身体に浸透していく。
目を見ると、酔ったように目を離せなくなる。


「神楽。
俺の言うことを、繰り返して。
━━━━━私は、真幌から放れられない。
はい!言って?」

「私は……」
「うん」

「真幌から…」
「うん」

「放れられない」

「うん。
━━━━━わかった?
もう、神楽は俺のモノなんだからね!」

「うん…」

「フフ…神楽、一緒に風呂入ろ?」

「うん」


一緒に浴槽に浸かる。
「フフ…相変わらず、顔真っ赤だ!
可愛い~」
後ろから神楽を抱き締め、顔を覗く真幌。

「私…心臓、壊れないかな?
ドキドキして、痛いくらい……(笑)」

「可愛いなぁー
いつか、神楽の心臓壊れるんじゃない?(笑)
これから毎日、俺に抱かれるんだから」

「うん。
……………ん?毎日?」

「うん、毎日!」

「え?それって、どうゆう……?」


「神楽。
ここに越しておいでよ!」

真幌が満面の笑みで、言い放ったのだった。
< 19 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop