黒幌に呑み込まれる
半年前━━━━━━━━

今年新入社員として、入社した真幌。

真幌は黒幌だと知られないように、目立たないように地味に過ごしていた。

しかしそれが、周りをイラただせていた。

「黒部くん、資料まだー」

「す、すみません…もうすぐで、出来上がります…」

「もうすぐって、急いでよ!
私、残業なんて嫌だから!」

「は、はい。すみません……」

「もう!謝るなら、早くしてよ!」


神楽は、そんな真幌を見ていられなかった。
神楽もそんなに器用な方ではない。

新人の頃は、神楽もよく怒られたものだ。

「黒部くん」
「あ、麦倉先輩」

「手伝うよ」
「え?だ、大丈夫ですよ」

「私は、そんな急ぐことしてないから」

そう言って、神楽はいつも真幌の作業を手伝っていた。


「━━━━━神楽、そんなことしなくていいんだよ?
黒部くん、なんか暗いし、キモいし、ウザくない?
そのまま、辞めてくんないかなってみんな言ってるよ?」
友人の、美乃(みの)が声をかけてくる。

「いや、なんかほっとけなくて……
私もよく怒られてたから、思い出すの」

それともう一つ、神楽が真幌を気にかける理由がある。
神楽は、続けていった。
「でも黒部くん、きっととってもカッコいい人だと思うよ?」

「また、その話?
何処が!!?」

真幌は、前髪を伸ばしていてあまり目元が見えずらい。
その髪型も、暗い、キモいと言われる所以だ。

でも神楽は、数週間前にたまたま見たことがあるのだ。
一目惚れとまではいかないが、その素顔を見て思わず見惚れたのだ。

窓から入る風に、髪の毛が揺れ目元がしっかり見えたのだ。

“か、カッコいい/////”
思わず呟いてしまう程、美しい容姿だったのだ。

モデル並みにスラッとした、真幌。

神楽の心は、一気に奪われたのだ。


それからも神楽はことある毎に、真幌を気にかけていた。

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