黒幌に呑み込まれる
神楽に、拒否権はなかった━━━━━

次の日には、理苑によって神楽の住んでいたアパートは解約されていて、荷物が真幌の家に運ばれていたのだ。

更に、真幌が言い放つ。

「神楽。
勝手なことしないでって思ったでしょ?
出ていくなら、出ていってもいいよ。
でも、神楽が住めるところは何処にもないからね!
━━━━━忘れるなよ、俺が……
“あの”黒幌のトップだってことを」

「出て行かないよ……」

出て行けるわけない━━━━━━

真幌のこの笑顔の中に、恐ろしい何かがあったから。



それからも、真幌は神楽を自分から離れて行かないように洗脳していく━━━━━━

「神楽…」
「真幌…だめ……」
朝起きてからずっと、キス責めを受けている神楽。

「もう少し、ラブラブしよ?」
「でももう…起きないと……会社…遅れ…ちゃ…」

真幌は、神楽に蕩けるような愛情を与えていく。


神楽の朝は━━━━目を覚ますとドアップの真幌の笑顔があり、顔を赤くして恥ずかしがることから始まる。
“神楽、可愛い”と言って、啄むようなキスを繰り返す真幌。
そんな真幌の行為にくすぐったそうに身をよじり、更に顔を赤くする神楽。

そんな神楽の行為が真幌の劣情が煽り、朝から襲われる。

そんな生活━━━━━


「神楽…」
「ん?」

「俺ね。
神楽の為なら、何でもしてあげるよ?」

狂おしい程に抱かれ、真幌の腕枕で頭を撫でられている神楽。
真幌がゆっくり、語りかけるように言う。

「うん…」
「何か、辛いことない?」

「ううん。真幌がいてくれるから、仕事も楽しい」

「良かった!」


そして……ついポロッと言った神楽の言葉が、地獄を呼んだ。

「あ、でも…」
「ん?」

「今日また、久我先輩に叱られちゃった!」

「は?」
「でもね。今回は、私は悪くないと思うの!」

「………」
「たぶんだけど、先輩嫉妬して私に当たったんだと思う。
だって私、何度も先輩に確認したんだよ?
その通りに書類を作成したのに、私のせいみたいになったの」

「へぇ…」
真幌の雰囲気が黒く落ちていっているのに、神楽は少し興奮していて気づかない。

「ほら、私が真幌と付き合ってるから、嫉妬してるんだよ、きっと!
先輩、真幌に憧れてるみたいだし!」

「あのおばさん、まだ神楽を苛めてんだな」



「そうなの!
それがなかったら、もっと楽しいのになぁ…」
この言葉が、久我を地獄に落とした。
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