黒幌に呑み込まれる
「ねぇ、久我さん、行方不明だってー」
「嘘!?」


「え……」
(行方不明!?)

神楽は、咄嗟に真幌を見た。
仕事中の真幌。
とても凛々しく、カッコいい。

「…………まさかね!」

しかしその後も、神楽が何気なく愚痴ると、それに関わった人間が消えていく。



「真幌…」
「んー?」
この日も狂おしい程抱かれ、真幌の腕枕で頭を撫でられている神楽。

「最近、周りの人達がいなくなってるよね?」

「うん」

「真幌の仕業じゃないよね?」

「………」
真幌の頭を撫でる手が止まった。

「真幌?」

「神楽が言ったんだよ?」

「え?」


「いなくなればいいって━━━━━」


「え……」

確かに、言った。
久我のことも、言葉は違うが“いなくなればいい”と思っていた。

「俺、言ったよな?
神楽の為なら、何でもしてあげるよって」

「嘘…そんな……!!!」

「大丈夫。
神楽は悪くない。
悪いのは、消えてった奴等」

「で、でも……私のせいで……」
震え出す、神楽。

「神楽!!」
「え…?」
ゆっくり起き上がり、神楽を組み敷く。

「ほら、俺の目を見て?」
「真幌…」
神楽は、震えながら真幌を見上げた。

「大丈夫」
「………」

「神楽は、悪くない……!」

「真幌…
ほんと?」

「うん。大丈夫。
だからもう……俺のことだけ考えて?」

そう言って、神楽の口唇を塞いだ真幌。





神楽は、いつもこんな風に真幌によって洗脳されていた。

神楽の一言が真幌を動かし、神楽の不安は真幌の言葉がかき消す。

お互いがお互いを必要とし、依存していく二人。




最初は、ちょっした気遣いだった。

いつも一人ぼっちの、真幌への。


暗い、キモい、ウザい………

数々の陰口を言われていた真幌だが、神楽は真幌のあの目を見てから、心が囚われ奪われていった。





神楽は、この先もずっと…………





真幌に呑み込まれて、逃げられない━━━━━━━











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