黒幌に呑み込まれる
そんなある日━━━━━神楽はなかなか作業が進まず、残業していた。

「はぁー、まだ終わんないよぉー」
一人、職場に残り必死に資料作成をしていた。

先輩社員・久我(くが)には“人のことばっか手伝ってるからよ”と嫌みを言われた。


「しょうがないじゃん!
気になるんだもん!」
思わず、愚痴る。

「━━━━━━何が、気になるんですか?」

「え?ひゃっ!!?
く、黒部くん!!?」

突然声がして、振り向くと真幌が立っていた。

「あ、すみません。驚かせて……」
「う、ううん!
それよりも、どうしたの?」

「あ、差し入れです。あと、俺も作業手伝おうかなって……!」

そう言って、コンビニ袋をデスクに置いた。

「わざわざありがとう!
でも、大丈夫だよ!」
「でも、いつもフォローしてくれてるから、たまには手伝わせてください。
…………それに、俺のせいで嫌み言われましたよね?
久我先輩に…」

「そんなの……昔からだから!
私も黒部くんと同じで、新人の頃はよく怒られてたんだよ?」

「そうなんですね……
あの人、そうなんだ……」

「え?」
一瞬、真幌を包む雰囲気が変わった。

「あ、それより。
腹ごしらえしましょ?」

でもすぐに雰囲気が戻り、真幌はコンビニ袋からたくさん弁当や惣菜を出した。

「凄い……こんなに沢山……」
「先輩が食べれなかったら、俺が食べるので好きなの食べてくださいね。」

「じゃあ…お金」
財布を取り出そうと、バッグを漁る。

「いらないですよ?
俺が、ごちそうしたいからしただけなんで」
「いや、でも……」

「ほんと、律儀なんですね……!」

「そうかな?」
「はい。そうゆうとこ、好きです」

「え?え?す、好き?」

「あ、変な意味はないですよ?」

「あ…そ、そうだよね/////
黒部くんみたいなカッコいい人が、私なんて……」

「え?え?か、カッコいい?」


「え?あ、その、あの、違うくて!
いや、違わないけど……/////」

思わず、本音を言ってしまい、しどろもどろになる神楽。

「今の、もういっぺん言って?」
グッと、真幌の顔が近づく。

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