熱く甘く溶かして
 指定されたのは、学校が完全に冬休みに入った年末だった。

 裏門で待ち合わせをした睦月と合流し、校舎の中に入っていく。

「むっちゃん、休みなのにごめんね」
「ううん、こちらこそだよ。智絵里ちゃんには感謝してもしきれない」

 あれから杉山は学校を解雇となり、起訴も確定した。

「生徒からも、智絵里ちゃんにお礼を言って欲しいって言われてたの。だからこのくらいのこと、お茶の子さいさいよ!」

 音楽準備室の前まで来ると、懐かしさが一番に込み上げる。睦月は鍵を開けてから、その鍵を智絵里に預ける。

「もしものために、中から鍵を閉めてね。帰る時に連絡くれる? それまで私は医務室にいるから」
「うん、わかった」

 睦月の姿が見えなくなるのを確認して、恭介は智絵里の手を取る。

「どう? 中に入れそう?」
「うん、今は大丈夫……」

 外より部屋の中の方が問題なのかもしれない。智絵里は苦しくなる呼吸を抑えながら、ドアノブを回した。

 あぁ、やっぱり。足がすくむ。あの日というよりは、あいつがいた部屋という記憶に嫌悪感を覚える。

「どうする? やめてもいいんだぞ」

 なかなか部屋に入れない智絵里に恭介は優しく語りかける。しかし智絵里は首を横に振る。

「やめない……。まだ何もしてないもの……」
「わかった。智絵里のペースでいいよ。逆に俺に任せてもらってもいいけど」

 恭介は智絵里の髪に触れる。弱気になっていた智絵里に安心感を与えてくれる。

「……じゃあ任せようかな……私だとなかなか進まないし……それに恭介は私が嫌がることはしないでしょ?」
「っていうか、もっとしたくなっちゃうかもよ。最近の智絵里、すごく俺を求めてくれるし」
「……自信過剰。でも……そうなるくらいにして欲しい……」

 恭介は音楽準備室の扉と鍵を閉めると、智絵里の体を扉に押し付ける。唇を重ね、貪るようなキスを繰り返す。
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