熱く甘く溶かして
智絵里は恭介のブレザーに手をかけると、前の一番上のボタンに触れる。
「私がつけたのってこれだよね」
「そうだよ。ほら、きれいについてるだろ?」
「うん……」
あれから思い出したことがあるの。卒業式の日、恭介はボタンをもらいに来た女の子たちに断りを入れていた。
『ごめん、これ知り合いにあげる約束してるんだ』
でもあげたわけじゃなかった。ということは私との思い出を大切にしてくれたってこと?
智絵里は恭介の頬を両手で挟むと、そっとキスをした。
「さっきちょっとイラッとしたけど、とりあえずなかったことにしてあげる」
「ん⁈ 俺何かした⁈」
「別に……それより私も恭介の制服を脱がしてもいい?」
智絵里が言うと、恭介は顔を真っ赤に染めて両手を広げる。
「……どうぞ。いくらでも脱がせてください」
「あはは! 恭介は私のを脱がすんでしょ? 手を休めないでよ」
この場所に再び来るとは思わなかった。もう二度と行かない、そう思っていた。
それなのに恭介とここに来て、こんな風に声を上げて笑うことが出来た。
「恭介……ありがとう……」
智絵里は恭介のブレザーを脱がせると、一つずつボタンを外していく。露になった肌と肌が触れ合うだけで、まるで全身が溶けてしまうような感覚に陥る。
なんて熱くて甘くて気持ちがいいの……。私は恭介の腕の中でなら素直になれる。意地っ張りの部分も、強がってしまう部分も、あなたの前でなら溶けてなくなってしまうの……。