熱く甘く溶かして
「松尾さんのおかげでやっと智絵里と再会出来たし、本当に感謝してます」
「すごい偶然だったけどな。なんか俺ってそういうセンサーが働くみたいなんだよ〜」
「それ、ご自身にも働くと良いですね」
「そうなんだよ……なんか自分のことになると全く……ってお前、もう少し先輩を敬えよ」
「毎日敬ってるじゃないですか」
二人の会話を聞きながら、智絵里はクスクスと笑う。再会してからずっと智絵里の表情は固かった。だからようやく肩の力が抜けたようで恭介はホッとする。
二人でいると、つい言いたい放題になっちゃうんだよな。親友の雲井さんといる時の智絵里は、よくこういう笑顔を見せていた。
智絵里に心の安らぎを与えられるようになれば、俺にも自然に見せてくれるようになるだろうか。智絵里の特別を全て俺に向けて欲しいと思うのはワガママなのかな。
「で、この引越しは同居? それとも同棲?」
松尾に言われて二人は顔を見合わせるが、智絵里は照れ臭くて視線を逸らす。そんな智絵里を見て、恭介は笑ってしまっ。彼女のツンデレな性格を知っているからこそ、照れてる仕草が自分に向けられていることに喜びを感じる。
「俺は同棲のつもりでいるからね」
まだどこか友達としての感覚が抜けない智絵里は、同棲という響きが少し恥ずかしかった。
「……い、良いんじゃない? ……付き合うならそうなるんでしょ?」
窓の外を見ながら耳まで真っ赤にしている智絵里が、心の底からかわいいと思ってしまう。
俺と智絵里の間に聳え立っていた友達という壁は相当高かったんだろうな。長い時間をかけてようやく壁を乗り越えてみたら、こんなに愛しい人に出会えるなんて思いもしなかった。