熱く甘く溶かして
* * * *

 二人は会社までの道のりを歩いていた。以前の部屋の方が明らかに近いが、それでも五分ほどの差だった。

「なるべく人通りの多い道を歩けよ。夜とかは一人じゃ危ないし」
「わかってるって。相変わらず心配性なんだから。なんか恭介って昔から私には過保護だよね」
「一応心配してるんだけど」
「はいはい、ありがとうございまーす」
「……なんかやっぱり歩きって心配だな。自転車とかは? それか帰りだけでも迎えに来ようかな」
「……私もう大人だよ。大丈夫だよ」
「大人だって犯罪に巻き込まれるだろ。うわっ、どうしよう……自分で言って不安になる」

 急にあたふたと焦り始めた恭介を見て、智絵里は声を上げて笑い始めた。

「あはは。じゃあそんなに心配なら時々迎えにきてよ。で一緒に帰ろう」
「……なるべく毎日来るようにしよう」
「私のことよりお仕事頑張りなさい」

 その時、二人の母校である海鵬高校の制服を着た男女とすれ違う。二人は自然と目で追った。

「懐かしいね……私たちもあんな感じだったのかなぁ」
「そうだな。高二の夏にあのことがあってから、なんか智絵里といるのが普通になった気がする。あの二人とはまだ連絡取り合ってるのか?」
「一花とは取り続けてるけど、めぐたんとは疎遠になっちゃったかな。そういえば恭介の友達と付き合ってたよね」
「うーん……確か大学二年生の時に別れたよ。俺も翔太とはかろうじて繋がってる感じかな」
「そうだったんだ……知らなかった」
「雲井さんは? 元気?」
「うん、もうすぐ二人目が産まれるんだよ」
「えっ! まさかあの時の先輩と……?」
「そう。今も仲良し夫婦でね、時々遊びに行かせてもらったりしてる」
「俺、あの先輩には負い目しかない……そっか……結婚したのか……」
「まぁ、あれがあったから二人の絆は強くなった気もするから、結果オーライでしょ」

 智絵里は恭介と繋いだ手に、無意識に力が入る。
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