熱く甘く溶かして
「何を話してたの?」
「ん? 俺がずっとネガティブ男子で、篠田くんのおかげで大変だったって話」
「あはは。懐かしいねぇ。でも私は篠田くんのおかげでちょっと進展したって思ってるよ。雨降って地固まるみたいな」
「確かに。あの後から一花と先輩の距離が縮んだよね」
「でもそれは智絵里と篠田くんもでしょ? あれからすごく仲良くなったし」
一花に言われ、二人は顔を見合わせる。確かにあの日がなければ、二人が仲良くなることはなかったに違いない。
「じゃあ私たちのキューピッドは一花なのね」
「うふふ。そうだったら嬉しいな」
智絵里と一花が笑い合う。一花といる智絵里はすごく優しい顔をしている。逆に智絵里といる一花も同じだった。
俺がいいなと思った雲井さんの横にはいつも智絵里がいた。なのにあの頃は雲井さんばかりで智絵里を見ていなかった。なんてもったいないことをしてたんだろう。どんな表情をしていたのかな。
「でも智絵里が男子と一緒にいるって、本当に珍しいことだったよね。それだけ気が合ったってことかな」
「なんか俺って智絵里の番犬って呼ばれてたんだって。この間早川に会った時に言われたよ。智絵里に変な虫がつかないように守ったらしいよ」
「そうなの?」
「いや、ごめん。俺には自覚なし」
素直に話すと、智絵里は笑う。
「でも自覚があったらたぶんこんな関係にはなってないよ。友達として深く関わったからこそ、恭介を信頼出来ると思うの」
見つめ合う二人を見ていた一花と尚政の方が、逆に照れてしまう。
「尚くん、なんか私たちの方が恥ずかしくなっちゃうね」
「でも智絵里ちゃんが幸せそうで、俺はすごく嬉しいよ。なんかお父さん的な気分。感無量」
「勝手にお父さんが増えても困るんですけど」
「お母さんな彼氏もいるしね」
「そうそう」
そんなやりとりをしながら、智絵里がここに連れてきた意味を考える。アメリカにまで行くくらい、きっとこの人たちは智絵里にとって心を許せる人たちなんだろうな。
その大事な人たちに会わせてくれたということは、俺もそこに分類されたということなのだろうか。
恭介は少し深い所で智絵里と繋がれたような気がした。