熱く甘く溶かして
これが何でもない人の反応なわけないでしょうが。智絵里はイラっとして、恭介の頬を力いっぱいつねった。
「いでっ!」
「あんたね! 言いたいことがあるならさっさと言いなさい! 私には言えって言ったくせに、自分はだんまりなわけ⁈」
智絵里が怒鳴っても、恭介はただ下を向いた。
「それって、私が関係してるの?」
「……」
「わかった。私と別れたいってこと? そうだよね、恭介は付き合っても長続きしないんだもん。私とも終わりってことだ」
「ち、違う! 勝手なこと言うなよ! 俺は絶対にお前から離れたりしないからな! だからそうじゃないんだよ……」
絶対に離れないと言われて、それだけで智絵里は満足してしまった。でも理由を聞かないことには先には進めない。
「ちゃんと言ってよ。私は恭介がいれば大丈夫だから。受け止められるから」
「……わかった……。でもちゃんと話したいから、家に帰ってからでいい?」
「……嫌だけど仕方ない。よし、タクシー捕まえよう」
「えっ、そんな慌てなくても……」
「嫌なのよ。恭介が……いつまでも元気がないのが。吐き出せばスッキリするでしょ? だから早く帰るの。わかった?」
恭介は困ったように笑う。俺の心配してくれるなんて思わなかった。
「わかったよ。早く帰ろう」
ちゃんと話せるだろうか……それがわからないから怖いんだ。でも何があっても俺が智絵里を守るということは変わらない。