熱く甘く溶かして
「早川くんは……どうして恭介に接触したの?」
「智絵里を探してるって。……被害届を出して、証言して欲しいって」
「そうなんだ……。そのことを先週からずっと一人で抱え込んで悩んでたの?」
「……だってようやく智絵里に笑顔が戻ってきてたのに、また辛い思いをさせることになるだろ……」
「そっか……恭介は優しいね……」
確かにその話を聞いてたじろいでいる自分がいる。あの男と対峙すると考えただけで体が震えだす。
「本当は今度のクラス会の時に、早川から話すはずだった。でもそれでいいのかわからなかった……」
「私のことに恭介を巻き込んでごめん……」
「違う。智絵里のことなら俺は自分から巻き込まれる覚悟だから。守るって言っただろ。俺は智絵里をこれ以上傷付けたくないだけなんだ」
『これ以上傷付けたくない』
その言葉が智絵里の心に響く。このまま何もしなければ、私みたいな被害者が増えるかもしれない。それを食い止めるために必要なのは、きっと私の勇気なんだと思う。
勇気を出したい、でも怖い……二つの言葉が智絵里の心の中を何度もリフレインしていく。
すると恭介が智絵里の体を引き寄せ、強く抱きしめた。
「すぐに結論は出さなくて大丈夫だよ。俺はどんなことがあっても智絵里を守るし、智絵里の意見を尊重するから」
恭介がいてくれることがこんなに心強い。
きっと今の私が出来ることは、誰かの未来を守ること。私と同じような想いを、誰かに背負わせてはいけない。こんなに辛くて悲しい想いを繋ぐことは許されない。