熱く甘く溶かして
「恭介、話してくれてありがとう」
「……黙っててごめん……」
「恭介なりの気遣いでしょ? でもかなり不安だったよ」
「俺って隠し事とか出来ないタイプなんだよ……」
「知ってる。でも不安を煽られちゃったし、何かしらで償ってもらおうかな」
「えっ、ちょっと待ってよ。嫌な予感しかしないんだけど……」
智絵里は戸惑う恭介の顔をいたずらっぽく見つめる。だけど本当はいろいろな感情が入り乱れ、不安ばかりが募るのを笑顔で隠そうとした。
「会社のそばの喫茶店の特大パフェを二人で食べる! 憧れだったんだよね〜。さすがにあのサイズを一人で食べる勇気はない」
「……胃袋もつかな……」
「あと腕時計が欲しい。電波時計。かわいいのがいいな」
「俺は心配して黙ってただけなのに……」
「時計」
「はいはい……」
「あともう一つ」
「まだあるの?」
智絵里は恭介の胸に顔を埋めた。あなたのこの優しさが私の気持ちを弱くするの。
「……朝までしっかり私のことを甘やかしなさい……」
どうしてもあなたを頼ってしまうの。
思いがけない智絵里の言葉に、恭介は困ったように下を向く。
「智絵里を甘やかすなんて、俺にとってはご褒美なんだけど……」
「私にとっては、恭介への罰なの。返事は?」
「……朝までしっかりご奉仕させいただきます」
「よろしい」
智絵里は恭介の輪郭を指でなぞり、唇に到達するとキスをする。あなたがいてくれて良かったって心から思うの。私一人ではきっと受け止めきれなかったはず。
「……ちゃんと考えて答えを出すから……。だから朝まではいろいろ忘れさせて……」
智絵里の瞳からこぼれ落ちた涙に恭介は口づける。体を抱き上げられ膝の上に乗せられると、智絵里は恭介の首に腕を回す。
今だけは何も考えずに、ただ愛する人との優しくて甘い快楽の中に溺れていたかった。