熱く甘く溶かして
* * * *
 
 貪るようなキスに酔っていると、急に恭介の動きがぴたっと止まる。

「良いこと思いついた」
「良いこと?」

 恭介はニヤッと笑うと、智絵里の隣に移動してスマホを手に取る。急に現実に戻されてしまい、智絵里は不服そうに恭介の体に抱きつき足を絡める。

「おっ、見つけた」
「何を?」

 智絵里の質問に笑顔だけ向けると、スマホの操作を続ける。それが終わると、智絵里の額にそっと口付ける。

「せっかくの三連休、まだ二日残ってるしさ、一泊二日で旅行にでも行こうか?」
「……いきなり?」

 すると恭介はスマホの画面を智絵里に見せる。隣の県にあるリゾートホテルだった。

「直前って意外と空きが出たりするんだよね。嫌って言っても予約しちゃったからね、連れてくよ」
「……嫌なんて言ってないわよ。旅行なんて久しぶりだからちょっとびっくりしただけ」

 恭介の手が、智絵里の髪の中を滑っていく。

「何も考えずに、ゆっくり過ごそうよ。食べたい時に食べて、観光してもいいし、部屋にこもって一日中イチャイチャしてもいいしさ」
「……なんて自堕落な旅行かしら……」
「いいんだよ。いろいろなことがあり過ぎて、頭の中だってまだ混乱してるだろ? のんびりぼんやりイチャイチャして一度リセットしてさ、その後でちゃんと考えよう」
「……イチャイチャっていうワードが二回も出てきた」
「……智絵里だってしたいだろ? イチャイチャ」

 覆い被さってきた恭介の首に腕を回し、唇を重ねる。彼の気持ちが嬉しかった。

「あのね、ベッドの中だけがイチャイチャじゃないのよ」
「……確かに。お風呂とかもイチャイチャ出来るな」
「そうじゃなくて。ご飯食べる時とか、一緒に並んで歩くだけだって、二人でいるだけで私は幸せだって言いたかったの」
「智絵里……!」
「なので、観光はちゃんとプランに入れてね。確かそのホテルの近くに有名なプリンのお店があったし、道の駅のご当地ソフトクリームも食べたいから」
「……さすが智絵里だよ。ブレない甘党。そんなところも好きだけど」

 クスクス笑い合うと、再びキスが始まる。

「恭介……」
「ん?」
「……いっぱいイチャイチャしようね……」
「もちろん」

 恭介の腕の中にいると何も考えられなくなる。ずっとこのままならいいのに……現実に戻るのが怖くなる。
< 70 / 111 >

この作品をシェア

pagetop