熱く甘く溶かして
「高二の夏に、二人でいろいろ出かけただろ? 最初はズケズケ物を言うし、何が高嶺の花だよって思ったけど、だから俺も思ったことを素直に言えてさ、すごく楽だった」
「そうだね……私もだよ。真っ直ぐ思ったことを口にする恭介だから信頼出来たし、一緒にいることを『嫌じゃない』って思えたの」
学生時代の恭介の口癖を言ったものだから、懐かしくて二人は笑い合う。
智絵里の匂いとともに、いくつもの記憶が呼び戻されてくる。
「智絵里ってば、動物園では小獣館に時間を割くし、水族館では巨大魚ばっかり見てるし、遊園地ではジェットコースターに連続で乗ってからのお化け屋敷。本当におまえといると飽きないんだよ」
「……半分悪口に聞こえるのは私の勘違い?」
「当たり前だろ。そこがかわいいって言ってんの」
「……物好きめ……」
「そうだよ。智絵里がくれる刺激がクセになっちゃってるからね。もう智絵里じゃないと満足出来なくなってる」
すると智絵里は急に立ち上がり、振り返ると恭介の足に跨るように座ると、彼の首に両手を回して抱きつく。
恭介はクスクス笑いながら智絵里の体を抱きしめた。
「智絵里ってば、かなり喜んでる?」
「……うるさい……」
あの頃はこんなにかわいい智絵里に気付かなかった。どちらかといえば同志のような存在だった。俺も子どもだったんだろうな……。
恭介は智絵里の体を離すと、髪の中に指を滑り込ませる。
君のそばが一番安心出来るということだけは、あの頃も今も変わることのない事実だった。