熱く甘く溶かして
「ち、智絵里! く、苦しい!」
「……そうよ、辛いのは私なの。あんたがいつまでも悲観的になってたらおかしいでしょ! 私を守ると言ったのはどこの誰⁈」
「お、俺です!」
「そうよ。それなら最後までちゃんと責任とりなさいなさいよ!」
「も……もちろんです……」
恭介の息が途切れ始め、智絵里はようやく腕の力を緩める。
「この問題に一緒に立ち向かってよ。それから私のことお嫁さんにしてくれるんでしょ?」
相当痛かったのか、恭介は下を向いて息を整えたまま黙っていた。しかし急に起き上がると、智絵里の両頬を摘んで引っ張る。
「何当たり前のこと言ってんだよ! 杉山なんか俺がぶっ潰してやる。それからお前のことを一生離してやらないからな。覚悟しろ」
智絵里は恭介の手を振り払うと、同じようにやり返す。
「望むところよ。絶対離れてやんないんだから。そっちこそ覚悟してなさい!」
二人は吹き出し笑い合うと、唇を重ねる。そしてそのままベッドへ倒れ込む。
「秘密はなしよ。どんな問題も二人でちゃんと共有しよう。わかった?」
「……気をつけます」
「本当に恭介の心配性は長所でもあり短所でもあるよね」
「……仰る通りです」
恭介の手がパジャマに裾から入り込むと、智絵里はその手を止めた。
「私、明日は会社を休む。大事な話をしないといけないから、今日はちゃんと寝よう」
「……じゃあ俺も会社を休む」
「明日は大事な会議があるって言ってたよね」
「うっ……じゃあ終わり次第駆けつける」
「うん、わかった」
行き場を失った恭介の手に、智絵里は自分の手を重ねる。
「……触るだけね」
「いいの?」
「……その方が私も安心して眠れそう」
恭介の唇が首に触れ、指先が肌をなぞる。その心地よさに酔いながら、智絵里はそっと目を閉じ、眠りの世界に堕ちていった。