お見合い婚にも初夜は必要ですか?【コミック追加エピソード】
呑めない人ではないけど、高晴さんって酔うと色白の顔がピンクに染まって色っぽくなっちゃうんだよね。格好良くてパリッとクールな榊高晴が、ピンクの頬と潤んだ瞳で、隙のある微笑を見せたら男も女もお持ち帰りしたくなっちゃうことは間違いない。
妻の贔屓目? ううん、うちの高晴さんは超絶格好いいから、本当に危ないの!

「高晴さん、大丈夫かなあ」

変な人に狙われてないといいんだけど……なんて女子大生の娘を持つ親みたいな気持ちでいると、玄関のインターホンが鳴った。高晴さんだ!

「はい」

インターホンに出るとカメラには思わぬ人物が。高晴さんといるのは部下の河合さん、あともうひとり若い男性がいる。ふたりとも高晴さんの肩を支え、当の本人は眠そうに目を伏せてぐらぐらしている。これはどう見ても泥酔状態。
高晴さんを連れてきてくれたのは、部下の河合さんと鈴木さんという男性だった。
ふらふらで相槌くらいしか打てない高晴さんを、男性ふたりの力でソファに座らせる。

「おふたりともありがとうございました」

私は頭を下げる。河合さんがイエイエと首を左右に振る。

「榊さん、呑めない若手を庇って呑んでくれたんです。今日は普段関わりのない営業部の本部長とかお酒大好きな上司が何人か参加していて」
「榊さんのおかげで俺たち本当に助かりました。若手が仕事しやすいように、飲み会の場で顔を繋いでくれたんです。営業本部長たちも榊さんのことがお気に入りなので、みんなお酒が進んでしまって」

ほらあ、全方位からモテてるじゃない。高晴さんの人たらし!
ううん、きっとお酒が苦手な若手と、お酒が大好きでコミュニケーションを取りたい他部署の上司たちの仲を取り持ったんだわ。アルハラって言って遠ざけ合うんじゃなくて、みんなが楽しい場にしたかったんだと思う。
その結果、酔いつぶれちゃって。

「本当にありがとうございました。あの、もう終電もないと思うので、タクシー代を」
「あ、それはもう榊さんから頂戴してます。奥様、夜分に失礼しました」

部下の男性ふたりは折り目正しくお辞儀をして帰っていった。
私はソファでぐうぐう眠っている高晴さんをちらりと見る。頑張ったねえ、高晴さん。とうぶん起きないだろうなあ。
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